水俣の海

水俣病事件で多くの人が恐れ、偏見の目、差別の目で見られてきた水俣の海。
ただ水俣の海は何も悪くないし、水俣病が起こるまで「魚(いお)湧く海」と言われるほど昔から水俣の海は四季折々様々な魚が獲れる豊かな海だった。

それが高度経済成長の時代に入り、36年間水俣病の原因となるチッソ工場からの排水を受け止め続けてきたのだ。その間に堆積した水銀の量は約150トンともいわれている。その代償はあまりにも大きく多くの生命を失った。莫大な水銀で一度は毒に侵された水俣の海はずっと戦い続け、そして人間が汚した海を静かに浄化し、今では昔のように多くの命を育む豊かな海に生まれ変わったのだ。経済発展の犠牲ともいえる水俣の海には今でも沢山の失った生命が眠っていることを忘れてはいけない。

そんな想いを忘れずにこれからも水俣の海と向き合っていこうと思う。

大澤基夫